空き家を所有している方にとって、その管理や税金の負担は大きな悩みのタネです。「使っていない空き家を売りたいけれど、税金がどれくらいかかるのか不安」「特例や控除制度って聞くけど、何をどうすればいいのか分からない」——そんな声をよく耳にします。
本記事では、空き家の売却に関わる税金の基本から、具体的な節税方法、特例制度、手続きの流れに至るまでを網羅的に解説します。初めて空き家を売却する方でも、この記事を読めば必要な知識と準備の流れをしっかり把握できるはずです。
空き家売却における税金の基本を押さえよう
空き家売却の流れと税金の発生ポイントとは
空き家の売却を考えたとき、最初に理解すべきは「売却に至るまでの流れ」と「どこで税金が発生するのか」ということです。空き家の売却には明確な手順があり、それに沿って進めることでトラブルを回避できます。
一般的な流れは、不動産会社への相談に始まり、物件の査定、媒介契約の締結、売却活動、買主との価格交渉、売買契約、引き渡しという順番です。この中で、税金が関係してくるのは主に「売買契約の成立」と「引き渡し後の確定申告」です。
特に注意すべきは、売却によって得た利益、つまり「譲渡所得」に対して課税される点です。単に空き家を売ったという事実ではなく、購入時と売却時の差額によって利益が発生したかが重要となります。この譲渡所得が正しく計算されていないと、後々追徴課税が発生するリスクもあります。
つまり、空き家を売却するには、物件そのものの価値だけでなく、税金というもう一つの「コスト」を正確に見積もって行動する必要があるのです。売却を計画する段階で、この税の流れを理解しておくことで、安心して取引に臨むことができるでしょう。
売却価格と譲渡所得の違いを理解する
空き家の売却で発生する「利益」は、そのまま課税対象になるわけではありません。ここで重要なのが、「売却価格」と「譲渡所得」の違いを明確に理解することです。多くの人が混同しやすいポイントでもあります。
売却価格とは、買主から支払われる金額、すなわち表面上の「売り上げ」です。一方で、譲渡所得とは、売却価格から「取得費」および「譲渡費用」を差し引いた、いわば純粋な利益部分に当たります。例えば、空き家を1,800万円で売却しても、取得費が1,200万円、譲渡費用(仲介手数料や登記費用など)が300万円あれば、譲渡所得は300万円となり、課税されるのはこの300万円に対してです。
この差を理解せずに、「高く売れたから税金がたくさんかかる」と考えてしまうのは大きな誤解です。また、取得費が不明な場合には概算取得費(売却額の5%)として計算される場合もありますが、それだと必要以上の税金を支払うことになるケースもあるため、可能な限り取得当時の資料を探し出すべきです。
つまり、売却価格と譲渡所得はまったく別物であり、税負担を正確に把握するためにも、それぞれの構成要素を正しく理解することが、無駄な出費を避ける第一歩となるのです。
空き家売却後に税金が発生するタイミング
売却を終えて一安心、と思いたいところですが、実際には売却後にやってくるのが「税金の支払い」です。特に注意が必要なのは、税金は売却時ではなく「翌年の確定申告時」に発生するという点です。
売却が完了した翌年、2月中旬から3月15日までに税務署へ確定申告を行う必要があります。ここで譲渡所得が発生していれば、それに基づいて所得税および住民税が課税されるのです。逆に言えば、売却益が出ていなければ、申告義務がないこともあります。
申告を怠った場合、延滞税や無申告加算税が発生するリスクがあります。また、税制優遇を受ける予定だったにも関わらず、申告漏れによって控除が無効になるケースも少なくありません。
したがって、空き家を売却した際には、売却日と次回の申告期間をカレンダーなどに記しておき、確実に準備を進めておくことが大切です。事前に税理士や不動産会社と連携し、必要書類の整理を進めておけば、余裕を持って申告が行えるでしょう。
税務署への申告義務と必要書類の準備
空き家の売却によって譲渡所得が発生した場合、その翌年に必ず確定申告を行う必要があります。とりわけ、税制優遇措置を利用する場合には、通常よりも多くの書類を整えておかなければなりません。
必要な書類としては、売買契約書の写し、登記事項証明書、譲渡所得の内訳書などが基本です。また、相続した空き家を売却する場合は、「被相続人居住用家屋等確認書」や「耐震基準適合証明書」なども必要になります。これらは自治体や指定機関に申請して取得しなければならないため、時間に余裕を持って準備する必要があります。
特例の適用を受けるためには、これらの書類を確実に提出し、正確に申告しなければなりません。1枚でも欠けると、税務署から問い合わせが入る可能性がありますし、結果的に控除が受けられないこともあり得ます。
したがって、売却を終えた後も「確定申告までが取引の完了」と捉えることが大切です。面倒に感じるかもしれませんが、事前の準備と知識が、無駄な税金を払わないための最大の武器になります。
空き家売却における税金の主な種類を知ろう
譲渡所得税とは?その基本と計算方法
空き家を売却する際に最も重要な税金が「譲渡所得税」です。これは、取得価格よりも高く売却できたときに発生する税金で、所得税および住民税の2つに分かれています。一般の収入とは別に「不動産を売って得た所得」として扱われ、特別な計算方法が用いられます。
まず基本的な考え方として、売却による収入から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて残った額が「譲渡所得」となり、これが課税対象です。たとえば、空き家を2,000万円で売却し、取得費が1,200万円、仲介手数料などの譲渡費用が200万円なら、譲渡所得は600万円になります。
この譲渡所得に対して、5年以下の所有であれば約39%、5年以上であれば約20%の税率が適用されます。税率の違いは非常に大きいため、売却のタイミングが節税に直結することを覚えておくべきです。
つまり、譲渡所得税はただの「不動産にかかる税」ではなく、売却益が出たときにのみ課税される、利益に対する税金です。適切な取得費の把握や控除制度の活用により、課税額を大きく抑えることが可能なため、事前のシミュレーションが極めて重要です。
登録免許税や印紙税などのその他税金
空き家の売却に関わる税金は譲渡所得税だけではありません。登記や契約といった手続きにおいても、それぞれ税金が発生します。その代表例が「登録免許税」と「印紙税」です。
まず登録免許税とは、所有権の移転登記を行う際に課される税金で、通常は買主が支払うものですが、売主が登記名義人を変更するケースなどでは負担する場合もあります。税率は定率で、不動産の評価額を基に計算されます。
一方、印紙税は売買契約書に貼付する収入印紙に対して課税されるもので、契約金額によって金額が変動します。たとえば、売買価格が1,000万円超〜5,000万円以下であれば、2万円(軽減あり)の印紙が必要です。契約書を複数作成する場合にはその分印紙税も増えるため、経費としてしっかり見積もっておく必要があります。
こうした税金は見落とされがちですが、売却額が高くなればなるほど負担も増えるため、売却にかかる「隠れコスト」として必ず把握しておくべきポイントです。契約前に不動産会社や司法書士と相談し、具体的な費用を明らかにしておくことが望まれます。
売却後も発生する可能性のある固定資産税
空き家の売却が完了しても、税金の支払いが完全に終了するわけではありません。その代表例が「固定資産税」です。この税金は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課されるもので、空き家であっても例外ではありません。
売却が決まっていても、引き渡しが翌年になると、その年の固定資産税は売主が支払うことになります。たとえば、12月に契約を結んだとしても、引き渡しが1月以降なら翌年の課税対象は売主になります。
また、売買契約において、固定資産税を売主と買主で日割り精算するケースが多いですが、その取り決めがなされていない場合には、全額を売主が負担することにもなりかねません。よって、契約時には固定資産税の扱いについて明確に取り決めをしておくことが非常に重要です。
さらに注意したいのが、空き家の状態によっては、固定資産税の軽減措置が打ち切られ、税額が6倍になる「特定空き家」指定のリスクもあることです。これを避けるためには、売却前の管理状態を見直すとともに、速やかに売却を進める努力が求められます。
空き家売却時にかかる税金のまとめ
空き家の売却には、さまざまな税金が複雑に絡んできます。中心となるのは譲渡所得税ですが、それ以外にも印紙税、登録免許税、固定資産税などが発生します。これらをすべて正確に把握しておかなければ、売却後に想定外の出費が発生する恐れもあります。
また、これらの税金の多くは申告手続きや登記処理の中で発生し、そのタイミングを誤ると遅延納付によるペナルティを受ける可能性もあるため、計画的な準備が欠かせません。税金は避けられない義務ですが、適切な知識と対策をもって臨めば、負担を最小限に抑えることが可能です。
空き家を売却する際には、利益ばかりに目を向けるのではなく、コストの全体像をしっかり把握すること。それが結果的に、損をしないための第一歩となるのです。
空き家売却における税金を抑えるための3つの特例
相続した空き家に適用される3000万円特別控除
相続によって得た空き家を売却する際、多くの人が直面するのが「譲渡所得税」の問題です。しかし、一定の条件を満たすことで、最大3,000万円の特別控除を受けられる制度が存在します。これにより、税負担を大きく軽減することが可能です。
この特例は、「被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合の特別控除」と呼ばれます。対象となるのは、相続によって取得した空き家で、相続開始直前に被相続人が一人で居住していた住宅であることが条件です。また、譲渡の時点でその空き家が一定の耐震基準を満たしている、または売却前に解体していることが必要です。
たとえば、売却益が2,800万円だった場合でも、この特例が適用されれば課税対象が0円となり、譲渡所得税を支払う必要がなくなります。これは非常に大きな節税効果と言えるでしょう。
ただし、特例の適用には「相続から3年を経過する年の12月31日までに売却すること」という期限もあるため、いつまでも空き家を放置しているとこの恩恵を受けられなくなります。早期に売却の意思を固め、条件に適合するかを専門家と確認しながら準備を進めることが重要です。
長期所有での軽減税率のメリットとは
不動産を売却した際に発生する譲渡所得税には、所有期間によって異なる税率が適用されます。特に「長期所有」の場合、税率が大きく軽減されるため、売却タイミングを慎重に見極めることで、大きな節税効果が期待できます。
具体的には、不動産を5年を超えて所有している場合、「長期譲渡所得」として課税され、所得税15%、住民税5%の合計20%の税率が適用されます。これに対して、5年以下の「短期譲渡所得」の場合、所得税30%、住民税9%の合計39%もの高い税率がかかるのです。
この違いを数字で示すと、たとえば譲渡所得が500万円の場合、長期所有であれば納税額は100万円ですが、短期所有なら約195万円と、95万円もの差が出ることになります。
重要なのは、「所有期間の起算点」が取得日からではなく、売却した年の1月1日時点で何年所有していたかという点です。つまり、4年11ヶ月しか経っていなくても、その年の1月1日時点で5年未満であれば、短期譲渡として扱われてしまいます。
このルールを理解していないと、本来節税できたはずの売却が無駄に高い税率で課税される結果になります。所有期間のカウント方法をしっかり理解し、売却の時期を調整することで、税負担を大きく抑えることができるのです。
以前自宅だった空き家に使える控除制度
かつて自宅として住んでいた家を売却する場合にも、税金の優遇を受けられる制度があります。それが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」です。この制度は、相続に関係なく、自分自身が過去に住んでいた住宅にも適用されます。
この特例の対象となるのは、住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却した場合です。また、売却時に住宅としての機能を維持していることや、第三者への貸し出しがないことも条件となります。
たとえば、転勤で空き家になった住宅を売却するケースでも、上記の条件を満たしていれば、この特別控除を適用することで、譲渡所得から3,000万円を控除することが可能です。
この制度を活用すれば、ほとんどのケースで課税所得をゼロにできるため、大きなメリットとなります。ただし、やはり確定申告が必須であり、必要書類の不備や誤申告によって、控除が適用されないケースもあるため注意が必要です。
以前自宅だった空き家を売却する際は、制度の詳細を事前に確認し、早めに準備することで無駄な税金を防ぐことができます。
特例を受けるためには確定申告が必須
上記のような税制優遇措置は、非常に魅力的ですが、自動的に適用されるものではありません。すべて「確定申告」によって自ら申請しなければならず、この点を理解していないと本来受けられるはずの特例を逃してしまうこともあります。
確定申告の際には、特例適用に必要な書類をすべて揃え、所定の申告書類に正確に記載する必要があります。たとえば、3000万円控除を受けるには、登記事項証明書や耐震基準適合証明書、または家屋を解体した場合の確認書などが必要になります。
書類の取得には時間がかかることも多く、自治体への申請や調査機関の検査が必要になるケースもあります。したがって、売却後ではなく売却前から必要書類を把握して動くことが望ましいです。
また、申告期限を過ぎてしまうと、たとえ条件を満たしていても特例が受けられない可能性があるため、毎年の確定申告期間をしっかり意識しておくことが必要です。
つまり、特例は「使える人だけが得をする制度」です。適用の条件や手続きを理解した上で、しっかり準備を進めることが、節税成功の鍵を握っているのです。
空き家売却における税金の節税に必要な書類と手続き
譲渡所得の内訳書や契約書などの提出書類
空き家を売却し、譲渡所得が発生した場合には、翌年の確定申告で正確に報告する義務があります。その際、必要となるのが「譲渡所得の内訳書」や「売買契約書」などの関係書類です。これらは、課税額を正しく計算し、場合によっては税制優遇を受けるための根拠資料となります。
譲渡所得の内訳書とは、売却価格や取得費、譲渡費用などを詳細に記載する書類であり、課税対象額を明確にするために必要です。この書類が正確でなければ、税務署は誤った所得に基づいて課税処理を行ってしまい、納税額が過大になったり、逆に過少申告とされて追徴課税を受けたりする恐れもあります。
また、売買契約書の写しは、実際の取引金額や日付を証明するために不可欠です。これがなければ、売却価格自体を証明できず、特例控除の適用条件を満たしていることを示すことも困難になります。
したがって、これらの書類は売却が決まった段階でしっかり保管し、原本およびコピーの両方を準備しておくことが望ましいです。税務署からの問い合わせにスムーズに対応できるよう、整理された状態でファイルしておくと安心です。
税制優遇の適用には耐震基準の証明も必要
空き家の売却において、税制優遇措置の一つである「相続空き家の3,000万円特別控除」を受けるには、住宅が一定の耐震基準を満たしている必要があります。そのためには「耐震基準適合証明書」または「建設住宅性能評価書の写し」の提出が求められます。
耐震基準適合証明書は、専門の建築士や検査機関が物件の構造や状態を確認し、基準をクリアしていることを証明する書類です。これを取得するには現地調査が必要で、申請から発行まで数週間を要する場合もあります。特に築年数が古い建物は適合しない可能性があるため、早めの調査が重要です。
一方、耐震基準を満たしていない場合でも、建物を解体して更地にして売却すれば特例の対象になります。この場合、「家屋の取壊し証明書」や「除却登記済証明書」などの書類が必要になります。
つまり、空き家の状態に応じて提出すべき書類が異なるため、どのルートで売却するかを早い段階で決め、それに応じた書類準備を進めることが、節税成功のカギとなります。
登記事項証明書や相続人確認書類の準備
空き家が相続によって取得されたものである場合、「登記事項証明書」や「相続人の関係を証明する書類」が必要となります。これらは、空き家の所有権や相続の正当性を証明するためのものであり、税務署はこれを根拠にして特例の適用可否を判断します。
登記事項証明書は、法務局で取得できる書類で、土地・建物の現在の所有者や過去の所有者の履歴などが記載されています。これは譲渡者本人が所有していたことを証明するための基本資料です。
相続人の関係書類としては、戸籍謄本や遺産分割協議書などが該当します。特に相続人が複数いる場合には、誰がどの財産を取得したかを明示した書類がなければ、売却そのものが進められないケースもあるため注意が必要です。
これらの書類は発行に時間がかかることもあり、特に複数の市町村に戸籍がまたがっている場合は一括で取得するのが難しいケースもあります。売却手続きの妨げにならないよう、早期に収集を開始し、整理しておくことが大切です。
提出期限と申告の流れを事前に確認しよう
空き家を売却した後に行う確定申告には、明確な期限と手続きの流れが存在します。これを守らなければ、せっかく準備した節税書類も無駄になることがあります。したがって、提出期限や流れを正確に理解し、行動に移すことが重要です。
確定申告の提出期間は、通常毎年2月16日から3月15日までの間です。この間に必要書類をそろえて税務署に提出しなければなりません。電子申告(e-Tax)を利用することで自宅からでも申告が可能ですが、初めての場合は操作に戸惑うこともあるため、事前にシステムの準備が必要です。
また、申告書の記入には譲渡所得の内訳書、各種証明書、登記関連書類などが必要です。これらを一つでも欠けると、申告が受理されなかったり、特例が適用されなかったりする恐れがあります。
期限間際になって慌てることのないよう、売却が決まった段階で申告に向けたスケジュールを立て、余裕をもって準備を進めることが成功への近道です。税理士に相談するのも有効な手段です。
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空き家売却における税金の注意点と特例適用ミスを防ぐ方法
耐震基準に満たない場合の対応方法
空き家を売却する際、税制優遇を受けるためには、建物が現行の耐震基準を満たしている必要があります。しかし、特に1981年以前に建築された住宅では、この基準を満たしていないケースが多く、知らずに売却を進めると特例を受けられないという落とし穴に陥る可能性があります。
この問題への対応方法は大きく2つあります。1つは、建物を耐震リフォームして基準を満たすこと。もう1つは、建物を解体して更地にしてから売却する方法です。耐震リフォームを選ぶ場合は、「耐震基準適合証明書」を取得する必要があり、工事費用や時間の面で慎重な検討が求められます。一方、解体することで建物の状態に関係なく特例を受けられるため、早期に売却したい場合には現実的な選択肢となるでしょう。
しかし、いずれの方法を選んでも事前の調査と判断が重要です。売却計画を立てる前に専門家の診断を受け、自分の物件が基準に達しているかどうかを確認しましょう。基準を満たさないまま進めると、大きな節税機会を失うことになります。
空き家を活用していた場合の影響
空き家を一時的に賃貸に出していた、あるいは事業用として活用していた場合、特例の適用条件を満たさなくなることがあります。この点を見落とすと、売却時に想定していた税制優遇が受けられず、結果として重い税負担を背負うことになります。
特に注意が必要なのは、「相続空き家の3000万円控除」の適用条件です。この制度は、相続後に空き家を誰も使用していないことが前提です。仮に、短期間でも第三者に貸していた場合や、自分で事務所代わりに使っていた場合には、「居住用財産ではない」と見なされ、控除対象から外れる可能性があります。
また、空き家活用の有無は確定申告時に提出する書類で確認されるため、過去の賃貸契約書や電気・水道などの利用履歴が確認されることもあります。特例適用を目指すなら、空き家を一切利用せず、できるだけ早期に売却する方が確実です。
空き家を有効活用したいという気持ちは理解できますが、節税効果とのバランスを考慮し、活用の有無が税制に与える影響をしっかり理解して行動することが大切です。
2つの特例の選択ミスによる損失とは
空き家の売却には、複数の税制優遇制度が存在します。その代表的なものが「居住用財産の3000万円控除」と「相続空き家に対する特例」です。しかし、これらの特例は併用できないため、どちらか一方を選択する必要があります。この選択を誤ると、最も有利な控除を受け損ねるという大きな損失が発生する可能性があります。
たとえば、相続によって取得した空き家を、自身がかつて居住していたとしても、そのまま「居住用財産の控除」を選んでしまうと、より節税効果の高い「相続空き家特例」を適用できないまま申告を終えることになります。特例の条件や控除対象額には微妙な違いがあり、状況によってどちらが有利かが変わるため、慎重な検討が必要です。
また、一度申告を行うと、後からの修正は手続きが煩雑になるため、申告前の段階で税理士などの専門家と相談し、自分のケースに最も適した特例を見極めることが不可欠です。どちらの特例を選ぶかという「小さな判断」が、数百万円の差につながることもあるのです。
予防策と事前準備でリスクを回避
空き家の売却において税制特例を正しく適用するには、何よりも「事前準備」が鍵になります。想定されるリスクをあらかじめ洗い出し、それに対して適切な書類や対応策を用意しておくことが、税金面での失敗を防ぐ最善の方法です。
たとえば、耐震性に不安がある場合には、売却の検討と同時に耐震診断を依頼し、早めに証明書取得の目処を立てるべきです。また、相続後に空き家を使わないと決めたら、水道や電気の契約を解約するなど、明確に「非利用状態」にしておくと、特例の適用時に証明しやすくなります。
さらに、確定申告時に必要となる書類は多岐に渡るため、売却契約時から「税申告を見越した書類整理」を始めるべきです。申告間際になって焦らないためにも、リストを作成し、抜け漏れなく準備を進める習慣を持ちましょう。
特例は制度として整備されている反面、適用には厳格な要件があるため、少しのミスで適用除外となるリスクもあります。だからこそ、売却が決まった時点から「節税のための動き」を始めることが、後悔しない結果につながるのです。
空き家売却における税金を抑えたいなら専門家への相談が有効
不動産会社と税理士の併用でスムーズに
空き家を売却しようと考えたとき、多くの人が「誰に相談すればいいのか」と悩みます。不動産会社で物件の売却については対応してくれるものの、税金の詳細に関しては専門外というケースも少なくありません。そこでカギを握るのが「不動産会社」と「税理士」の併用です。
不動産会社は市場価格の把握や売却戦略の立案に優れていますが、税制の優遇措置や確定申告の処理には限界があります。一方、税理士は譲渡所得税の計算や特例の適用判断、申告書類の作成など、税務処理のエキスパートです。両者を組み合わせて相談することで、「高く売って、税金を抑える」ための理想的な売却が実現します。
たとえば、相続した空き家の売却を検討している場合、不動産会社が適正な売却価格を設定する一方で、税理士は3000万円控除の適用条件や必要書類をアドバイスしてくれます。これにより、売却後の手取り額を最大化できるのです。
特に初めて不動産を売却する方や、税制が複雑で不安がある方には、この併用相談体制をおすすめします。適材適所の専門家を活用することが、結果的に時間・労力・税金の節約につながります。
空き家買取専門業者の活用も選択肢
空き家を早く処分したい、遠方にあるため現地での対応が難しいという場合には、「空き家買取専門業者」の活用が有効な手段となります。特に税金面での不安を抱えている方には、ワンストップで対応してくれる業者が心強い味方になります。
買取業者は、仲介による売却とは異なり、業者自らが買主となるため、短期間での現金化が可能です。また、瑕疵担保責任を問われにくく、売却後のトラブルも最小限に抑えられます。税制についても、業者によっては顧問税理士と連携しており、特例の適用に関するアドバイスを提供してくれることもあります。
ただし、相場よりも価格が安くなる傾向があるため、手元に残る金額とのバランスを考慮して決断する必要があります。とはいえ、特例を活用して譲渡所得税を抑えることができれば、実質的な利益差は小さくなることもあるため、専門家の意見を聞いたうえで総合的に判断することが大切です。
税金対策と迅速な売却を両立したい人にとって、買取業者の活用は検討すべき有力な選択肢のひとつです。
相談前に準備しておくべき情報とは
専門家に相談する際、事前に準備しておくべき情報があります。これを用意しておくことで、相談の精度が上がり、より実践的なアドバイスを受けることが可能になります。
まず必要なのは、空き家の「登記事項証明書」や「固定資産税の納税通知書」などの基本情報です。これにより、所有者や土地・建物の評価額、権利関係を明確に伝えることができます。加えて、過去にかかったリフォーム費用や売却希望価格、相続が関係する場合は被相続人の死亡日や相続関係図なども整理しておくとよいでしょう。
また、特例を受ける可能性がある場合には、耐震基準適合証明書や解体証明書の取得予定の有無も伝えておくことが重要です。これらの情報を揃えることで、税理士はどの特例が適用可能かを正確に判断し、不動産会社は適切な売却戦略を立案することができます。
準備が不十分だと、相談に時間がかかるだけでなく、誤った判断をしてしまうリスクも高まります。限られた相談時間を有効活用するためにも、資料の整理と情報の事前把握は怠らないようにしましょう。
無料相談窓口も活用しよう
専門家に相談したいと思っても、「相談料が高そうで不安」という方も多いかもしれません。そんなときに活用したいのが、各自治体や公的機関が提供する「無料相談窓口」です。特に空き家の税金や売却については、空き家対策を進める行政主導のサポートが充実してきています。
たとえば、市区町村の「空き家バンク」や「住まいの相談窓口」では、不動産や法律、税金に関する初歩的な相談を無料で受け付けています。定期的に専門家による無料相談会を開催しているところもあり、初めての人でも気軽に利用できる仕組みが整っています。
こうした窓口を利用すれば、まず自分の空き家がどういう状態なのか、どのような税制が関わるのかを大まかに把握できます。そのうえで、より専門的な対応が必要な場合には税理士や弁護士などへの本格的な相談につなげることが可能です。
無料だからといって侮ってはいけません。正確な知識を得るための「入口」として非常に有効です。迷っている場合は、まず無料相談から一歩踏み出してみることをおすすめします。


投稿者プロフィール

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有限会社ひかり不動産 代表取締役
宅地建物取引士 二級建築士
埼玉県美里町に生まれ育ち
1987年~1990年:住宅建築・不動産会社勤務
1990年~:有限会社ひかり不動産
2000年~現在:有限会社ひかり不動産 代表取締役
不動産・住宅建築業界一筋で業界歴35年超のベテラン
長年の経験と今まで培ってきた事 そして、こだわりのある
「自然素材の家づくり」について皆様にお伝えします
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